【会社名】白嶽酒造株式会社(旧 : 河内酒造合名会社)
【住所】〒817-0322 長崎県対馬市美津島町鶏知甲490-1
【主な事業内容】日本酒・焼酎・リキュール類の製造販売
【HP】こちら
【取材先】伊藤浩一郎(代表社員)、伊藤真太郎

※初回取材:2022年
 追加取材:2024年


対馬で100年続く、唯一の酒造。秘訣は水。

――どんな事業をやっていますか。

大正8年創業の対馬唯一の酒造です。今年で101年目になります。祖父が初代で、自分で3代目となり、今は息子と一緒にお酒を造っています。

代表的な銘柄は、日本酒「白嶽」。日本酒を中心に、焼酎やリキュールの梅酒を扱っています。原料は基本的にお米が中心です。

―他のお酒との違いはありますか。

一番の強みは、水です。この水のおかげでここまで続いてこれたと思っています。対馬の水は軟水気味なので、加工もそこまでしていません。ろ過して異物を除去するくらいです。対馬の自然の中でつくっているのが「ウリ」です。

――生産にあたってのこだわりはありますか。

昔のままのお酒造りの製法を継承しています。例えば、米を洗う機械は50年変わっていません。巨大な釜やタンクも昔のままです。タンクには梯子をつたって作業をしています。大きい酒造メーカーですと、もっと効率的に機械でやっているところもあると思いますが、そことは違い、昔のままのやり方で作り続けていくのが大事かなと思っています。

これからは、小さい蔵なりに酒づくりを広めていきたい

――地元で唯一の酒造ということですが、大事にされていることはありますか。

父:地元の酒としてはもう古くから認知してもらえているので、これを大事にしたい。その上で、島の外へ広げていきたいです。最初の目標は100年続けることでしたが、達成できたから、いずれ息子が継ぐことを考えて、ちゃんと次の代へ繋げることですね。

息子:長男ということで、会社を継ぐという想いが最初でした。東京で醸造科の大学に入り、そこで出会った人たちや、戻ってきてから九州の様々な酒蔵さんと交流するようになって、小さい蔵なりに酒づくりを広めていきたいと思うようになりました。

対馬で日本酒といえば、白嶽。島外でも対馬の食材とともに。

――みんなに知ってほしいことはありますか。

これまでは地元のための酒造でしたが、島内の人口が減り、島内消費だけでは成り立たないという現実もあります。島の外で売れるようになるだけでなく、うちの酒が有名になって対馬が有名になるといいなと思います。九州の中でも日本酒づくりをやっているところは珍しいから、広めていけたら嬉しいです。

また、うちの酒だけでなく、対馬の食材も一緒に広げたい対馬の食材に合う、対馬の酒として作り続けていきたいです。

――社団に期待することを教えてください。

父:千野理事長にはこれまでの人たちとは違うと何かを感じた。成功事例をつくっていきたいとおっしゃっていたので、一緒に頑張りたいと思います。

息子:島外に出ていく場合は、無理やり入りこむのではなく、他の土地のお酒とも共存できるようにしていきたいです。そして、対馬のものとしてこれからも続けていくことで、対馬を広めていきたい。


~2年が経ち、伊藤 真太郎さんにあらためてお話を伺いました~

昨年10月に河内酒造合名会社から白嶽酒造株式会社へと変わって、私が専務取締役兼杜氏として製造責任者となりました。と同時に、売り物の一新といいますか、これまで特選、原酒、生酒で種別していたのですが、消費者の方にはどのようなランクのお酒かわかりづらいということで特別本醸造、原酒、生酒とすることにしました。わかりやすくすることで、価値に見合う価格もクオリティも保つことができます。併せてラベルのデザインも変えて、それも対馬内外でも変えようかと思っています。たとえば「上撰」といっても、島内では通じるけど島外の一般消費者の中には存じない方もいらっしゃるので。

実はいま実験的に、焼酎にあるものを入れて試作しているんです。初めてなのでどうなるかわからないんですけど、これが商品化できれば少し違う展開が見えるかな。既存商品の焼酎「対馬やまねこ」がすっきりと飲みやすいというのに対して、そうではないインパクトを与えることができるものになると思います。

昔ながらの商品を変えてしまうとなじみのお客様が離れてしまう可能性もあるけど、そういう新しいアイテムなら見せ方から内容、価格までさまざまなチャレンジができます。これからは、大量生産大量販売ではなく、商品のブラッシュアップをしていって価値をつけて、百貨店や専門店を中心に展開していければと思っています。