【会社名】株式会社フレッシュ対馬
【住所】〒817-1201 長崎県対馬市豊玉町仁位2091-3
【主な事業内容】あなご活魚運搬販売、あなご加工品製造販売、あなご料理店
【取材先】島居 吉秀(代表取締役)


対馬に潜む黄金

水深150~200m。水温10℃以下。太陽の光がうっすらとしか届かない冷たい海に「黄金」の名を冠すその魚は潜んでいる。「黄金(こがね)あなご」だ。

黄金あなごとは、フレッシュ対馬が自信を持って取り扱うブランド魚種。日焼けのない胴体が煌びやかに輝く黄金のように見えたことから、その名が付いた。通常のあなごよりもほっそり小顔なものの、丸々と太い体を持つのが特徴。最も大きなサイズになると体長60~70cm、胴まわりは直径およそ7cmにもなる。

「対馬はあなごが有名やけんど、島の西と東でも漁れるんは、まったく別物やけん。西は脂ノリが抜群。そげんなかでも特別、脂肪を蓄えたのが『黄金あなご』ですね」。

それは、データでも証明されている。行政や大学と一緒に調査した結果では対馬産のほかのあなごと比較して、脂質が6倍にもなることが明らかになった。理由は、餌となる深海イワシが豊富に生息する韓国との国境付近の海域で育つため、と推測されているが、より詳しい話は漁場にも関わるため企業秘密とのこと。

加えて、さらにデータで明かされた事実がある。それは、体全体の骨の少なさ。ほかのあなごに比べて8割程度、かつ骨が柔らかく、しなやかな体を持つ。それは料理にした際にも骨が邪魔をすることなく、美味しく食べられることを意味する。

「うちのあなごは著名な料理店からの引き合いも多く、いっぺん味わったら『やっぱり、島居さんとこのじゃないとダメやわ』なんて言われるとです。ありがたかことです」。

余すことなく味わい尽くす

漁師から引き取ったあなごは、体格に応じて素早く選り分ける。わずかなストレスも与えないように、やさしく丁寧に扱うのは当たり前。品質を最大限に守り、鮮度の高い状態でお届けする心がけだ。その後、活魚は自社で保有する大型トラックに載せ、生きたまま対馬を出発。九州・関西・関東へと行商のようにお得意先のもとへ。いまでも島居社長が5日ほどかけて対馬から各地を巡るというから驚きだ。

自社で運営するレストラン「あなご亭」での料理の提供、加工食品事業での通信販売も行う、島居社長。一般のお客様にも美味しいあなごを食べてもらいたいと、せいろ蒸しやあなごカツ、あなごの刺身など、フレッシュ対馬でしか味わえない珍しい逸品も取り揃える。頭や骨などの骸は調理の出汁として、肝は肝吸いとして、余すことなく味わい尽くせる、黄金あなご。

「海が好きで、魚が好きで、食べるのが好きで、探求するのが好きで。そげなことをコツコツやってきて、いまがあります。趣味ですか? 黄金あなごと向き合っとる時間が、一番楽しかですね」。