【会社名】うえはら 株式会社
【住所】〒817-0032 長崎県対馬市厳原町久田491-1
【主な事業内容】食品製造・卸売・小売
【取材先】上原 正行(相談役)・久恵(専務)
※取材:2022年
対馬の海と60年
「おいの職業? 対馬の海産物屋のオッチャンよ。もう60年くらい、ずっとこの島で商売人をやってきたと。最初は親父の海鮮問屋を手伝って。磯ごと魚介や海藻やらを買い付けては、島外まで売りに行きよったと。10年ほどしたら、親父が『人と違うことせにゃならん』って。椎茸の原木栽培を始めた。雨さ降ったら原木を棒でたたくとにょきにょき椎茸が出よるもんやから、家族でゴンゴン木を小突きに行ったよな。ほんでまた海鮮屋に戻って、イカを売った。当時の仕入れ値は一杯が5~10円。自分さ23、24歳の若造やったけど、漁船率いて売り捌いたな。1回でウン千杯も漁れたこともあるよ。ほんでも、だんだんイカも高騰して。もう問屋だけでは商売上がったり。やけん、自分とこで商品作ろう思ったと。イカの塩辛にウニの塩漬け、岩海苔の佃煮、いろんなもんこさえて、福岡や大阪、東京の百貨店に売り込んでは、その間にも自分で小売店も構えて。ほしたら……」。
話し出すと止まらない。おしゃべり好きの正行さん。対馬の海と人生をともにした、生粋の商売人である。夫人の久恵さんは、そんな正行さんの隣で商売の浮き沈みを支えてきた。夫婦になって50年。お二人ともに、まだまだ現役で物産屋の商売を楽しんでいる。


食に無限のアイデアを
うえはらのイチ押し商品は、干物をレトルトパウチで加工した「フィッシュ・クック・ブック」シリーズ。ラインナップは、対馬五月アジを筆頭に、カマス、サバ、あなご、ひおうぎ貝など豊富な魚種を取り揃える。地魚である対馬五月アジは、脂の乗った個体しか使用しないという。

「ダルマみたいに、コロコロっと丸っこいカタチが理想やけんね。201海区っちゅう対馬から北上した海で漁れるアジにこだわっとる。身を開いたときに骨が隠れるくらいの脂がついとるけ、干物にすると美味しかよね」。
魚は加圧処理を施すため、頭から尻尾まで丸々食べられる。食後には骨も皮も残らないことからフードロスにも貢献。環境に配慮した無添加商品といえる。パッケージには、少量の空気が残る含気包装を採用。日を追うごとに包装内で熟成が進み、旨みが増す。

海産物をどうしたら美味しく食べてもらえるか、さまざまなアイデアを考えてきた正行さん。その姿は生粋の商売人であり、クリエイターともいえる。 「最近は会社に小学生たちを招いて、商品づくりのワークショップなんかも開催して。対馬から世界に羽ばたく起業家を育てるんが、次のオッチャンの夢っちゃね」。
