【会社名】株式会社 しまおう
【住所】〒853-0031 長崎県五島市吉久木町729-1
【主な事業内容】海産物練り物の製造・販売
【取材先】山本 善英(代表取締役)
※取材:2022年
日本一の練り物屋
日本でNo.1になった練り物屋が、この島にはある。
全国かまぼこ品評会。北海道から沖縄まで日本中から選りすぐりの練り物が集まるこの大会で、2015年、しまおうはトップの称号である農林水産大臣賞を受賞した。
最高の栄誉に輝いた商品は、「あじの活揚」。手のひらほどの大きさが特徴の上げかまぼこは、外がこんがりキツネ色。噛むほどにしっかりと弾力を感じ、魚本来の濃厚な味と香りを楽しめる。聞けば、原料のアジには長崎県産しか使用しないという徹底ぶり。潮の流れの速い五島近海で育つ魚は身が引き締まり、旨みがギュッと凝縮される。そのアジを使い、一切の加水をせずにかまぼこを製造するからこそ、魚の風味が活き活きと感じられるのだ。
「授賞式では、『加水なし、魚だけでこれほどの食感と味を出した点が素晴らしい』とのコメントをもらいました。五島で採れるアジ自体が褒められたようで、うれしかったですね」。


しまおうのすごさは、受賞品が「あじの活揚」だけではなく、ほかにも多数あるところ。水産庁長官賞や大日本水産会長賞をはじめ、2009年から2022年までに12の賞に輝く。揚げかまぼこ、蒸しかまぼこ、つみれ、すり身と、さまざまな練り製品がノミネートした。
食文化に磨かれた味
快挙を続ける要因には、この島の食文化も関係しているのかもしれない。実は五島では、日常的に練り製品を食べる習慣がある。そのまま食すのはもちろん、汁物の具材に入れたり、炒め物の主役に据えたり。週に2~3日は食卓に出る家庭も多いという。子どもからお年寄りまで身近な食材が練り物であり、その食文化にしまおうは支えられた。
2代目である山本社長も幼少期から練り製品で育った。先代であるお父さんが作ってくれた「すり身」は絶品だったという。アジ、イワシ、アゴなど、五島で漁れた恵みをふんだんに使った手作りのすり身は昔からの人気メニュー。トントンッ、トントンッ、と包丁で小気味よく叩いたすり身は、調理するとフワフワに仕上がる。歯応えと柔らかさの両立。独特な食感の生み出し方は企業秘密らしいが、父親の代から定評のあるすり身の秘密はいま、しまおうの売れ筋商品である「島すりみ」にしっかりと受け継がれている。

「魚の旨みがキュッと詰まった練り物を、みなさんには食べてもらいたいとです。うちの商品を美味しいっちいうてくれるのが、わたしらの一番の幸せです」。


129の島々からなる五島列島。近海で漁れる海の恵みは日本有数の豊富さだと言われる。そんな“島の王国”に、“しまおう”の美味しさは育まれているのだ。

