【会社名】株式会社 猿川伊豆酒造
【住所】〒811-5326 長崎県壱岐市芦辺町深江本村触1402-1
【主な事業内容】麦焼酎製造・販売
【取材先】伊豆 哲弥(専務取締役)

※初回取材:2022年
 追加取材:2024年


日々、進化する本格麦焼酎

麦焼酎発祥の地「壱岐」。朝鮮大陸から伝わった蒸留技術を基に、焼酎造りが始まったのは16世紀頃とされる。以来、さまざまな蔵元が生まれ、酒造りに切磋琢磨し、独自の歴史を辿ってきた。その一つに、猿川伊豆酒造がある。

壱岐を代表する本格麦焼酎「猿川(サルコー)」。口当たりは柔らか、あっさりとした甘みを感じながらも、焦がした麦の香りがほんのりと鼻を抜ける逸品だ。「猿川」という銘柄は、会社名の元にもなっている河川の名、酒造場の裏手を流れる「猿川川(サルコガワ)」にあやかり名付けられた。

「初代が深江川北の地に酒造場を開いたのは、山と川、豊かな自然に溢れた土地やったからと聞いとります。創業から120年が経ったいまも、このあたりは野生動物が出るくらい、自然が近かところです」。

壱岐の麦焼酎は原料に大麦と米を用いる。割合は大麦が2に対して米が1。この比率を厳密に守るのが、壱岐焼酎の特徴だ。米は発酵させて「米麹」を作り、大麦を醸す。その甘みはそのまま焼酎に染み渡り、旨さとなる。

猿川伊豆酒造で使用する原料は壱岐で収穫される大麦と米をベースに、国内から厳選した品種も使用。納得のいく麦焼酎を生むために常に改善を繰り返す。

こだわりは原料だけに尽きない。発酵状態の「もろみ」から焼酎を蒸留する際には、昔ながらの「常圧蒸留」と近年主流となる「減圧蒸留」を使い分ける。気圧の違う手法を用いることで、風味の異なる焼酎の醸造を可能にする。

「蒸留後はホーロー製のタンクで熟成させるとです。最低でも1~1年半ほど寝かせます。そえんせな、カドの取れた、柔らかな口当たりにはなりません。手間は掛かるとですが。手間を省くと旨い焼酎はできんですから」。

猿川ブランドを島外へ

酒造3代目の平さんと息子で専務の哲弥さんをはじめ、猿川伊豆酒造は総勢8名が在籍。酒造の今後を背負う哲弥さん。福岡の大学を卒業後、すぐには家業を継がずに自動車の販売という異業界の道を選んだ。回り道をして酒造からは程遠い世界を経験したおかげか、家業に戻った際、自社や酒造業界を客観的な視点で見ることができたという。

自社のブランド価値を通じて、お客様の満足度および幸福度を高める。今後は前職で得た知見を活かして、島内や限られた客先にしか卸していなかった「猿川ブランド」を、日本中、世界中へと拡めていきたい、と哲弥さんは話す。

「先祖から受け継いだ伝統、周囲の自然からいただく恵みは、俺たちの財産やけん。この先10年、20年と、焼酎造り一筋迷わずに精進していくとよ」。

一滴一滴の水が、やがて大きな河川を形づくるように。一歩一歩の歩みが、猿川伊豆酒造の大きな夢を叶えることだろう。

猿川伊豆酒造では、「猿川」以外にも複数のブランドを醸造する。
猿川に次いで人気の高い銘柄、「円円(まろまろ)」。熟成時に超音波を当てることで、通常の焼酎よりも舌触りの柔らかい、まろやかな味わいを醸し出す。アルコールの身体への負担も軽減される。

~2年が経ち、伊豆 哲弥さんにあらためてお話を伺いました~

コロナ禍で一時は大きく売り上げが落ち込みましたが、市場はだんだんと戻ってきています。ウチも造りを増やしたこともあって、おかげさまで微量ですが昨年度より出荷は伸びております。市場的にはまだまだ入り込む場所はあると思うんですけど、なかなか。ウチ独自で営業に行くというのはこれからかなと思っています。

私たちの悪いところは、話が決まってもそのあとを追っかけるのがヘタなんですね。ですから離創協さんにはそのへんを指導していただけるとありがたいです。私みたいな性格だと、追っかけが逆に押し売りみたいになってしまって。純粋な営業職であればもうちょっと深い追っかけができるんですけど。サンプルを渡しても、それが良ければ話が進むけど良くなかったらなしのつぶてで。本当はそこを踏み込むことができれば「なしのつぶての理由」が確認できて「じゃあ次は」とつながるのですが、そのへんの加減が難しいです。

あとは、一年でも長く協会を続けていただければ。それがやっぱり一番の希望ですね。どうしても私たちボサッとしとったら、たとえば商談会や展示会も現在お取引のある商社さんばかりになってしまう。でも協会さんがあれば、これまでお取引のなかった商社さんや催しにも出店可能になりますんで、そのへんですね、期待させていただけたら。そこまでしていただいたら、あとはもう自分との勝負でしょうね、最終的には。やっぱり自分が、ちゃんと意識を持って動かないかんですよね。それが最終的にはあと追いをちゃんと完結させるとか、そういうことにつながっていくのだと思います。