【会社名】大島酒造 株式会社
【住所】〒857-2427 長崎県西海市大島町830
【主な事業内容】焼酎製造
【取材先】長岡 祐一(代表取締役社長)・山道 秀生(取締役製造部長)
【ホームページURL】https://oshima-shuzou.co.jp
國酒に選ばれた長崎の芋焼酎
大島酒造の芋焼酎「七輝星」「磨き大島」は、令和に入り立て続けに「全国本格焼酎鑑評会」の上位酒に選ばれた。

全国本格焼酎鑑評会とは、独立行政法人 酒類総合研究所、日本酒造組合中央会が共催する鑑評会。上位酒は「國酒(こくしゅ=日本を代表する酒)」として在外公館で開催されるパーティや晩餐会などでふるまわれることになる。
そのことは、スタッフたちの自信と誇りとなり、また、鑑評会で行われる化学的な分析は自分たちが作り出すものを客観的に見る良い機会となった。
しかし、麦焼酎のイメージの強い長崎県で、しかも焼酎の歴史のない大島町でなぜ芋焼酎なのか? それはこの会社の設立と大きな関りがある。
温暖な気候とミネラル豊富な赤土に恵まれた大島町は、良質なさつま芋「紅あずま」の生産が盛んだった。この紅あずまの消費促進と有効活用を考えていた当時の町長が着目したのが芋焼酎だった。町長は大島酒造の前身である「長崎大島醸造株式会社」(昭和60/1985年創業)の立ち上げに尽力。翌年には同社第一号芋焼酎「ちょうちょうさん」が誕生し、芋焼酎造りの歴史が始まった。ちなみにこの「ちょうちょうさん」、長崎が舞台のオペラ「蝶々夫人」かと思いきや、「町長さん」へのオマージュも込められたダブルミーニングなのだとか。
その後は順当に新商品を開発していったが、やがて業績は低迷。そこに新しい社長として入ったのが長岡さんだ。当時、収益はどん底で莫大な赤字だったという。

「私がここへきて何をしたかというと、原料となるさつま芋づくり。地元の土で芋を育てながら原料を知り、原料の中身が一体どうなっているのかということを知り、作ってくれている契約農家さんたちの苦労を知るためです。」
小さな畑は、いまでは2ヘクタールに。最初は「なんでこがんことまでせんばならんとや」と不満を漏らしていた従業員も、最近では苗を植え育て、収穫の秋になると芋の出来を気にするようになった。
「うちの芋焼酎は何百年もの歴史を持つ鹿児島や宮崎の芋焼酎とは別物なんです。こっちはたかだか40年。でもそこで誇れるのはこの土地で、この土地の水で、この土地の人が造る、その技術を持っているということが全国本格焼酎鑑評会で証明されたんです。」
食事の邪魔をしない品質を目指して
畑で栽培されているのは、食べても美味しい紅はるかと紅あずま。同社は芋の配合を研究し、独特のクセや匂いを楽しむ鹿児島や熊本のものとはまったく違う、非常にやわらかな芋焼酎に仕上げている。
「美味しいね、と飲みはじめたら、そのまま美味しい食事の邪魔をせず、一緒にずっと飲んでいただきたいという思いがありますので、そういった質を目指しているんですね」と話すのは、焼酎製造責任者の山道さん。

芋の外側を大胆に削り、真ん中の部分だけを仕込んだ吟醸芋焼酎「磨き大島」をいただく。柑橘を思わせるさわやかな香り、キレの良い軽やかな口当りと上品でほのかな甘みを感じる味わいは、いままで飲んだことのある芋焼酎ではない。食事と一緒に楽しめる質を目指しているという意味がよく分かった。


平成29(2017)年には蔵も建て替えた。蔵の中はタンクや機械がずらり。最新の機械を導入し、大部分の作業工程が自動で処理できるようになったことで作業効率は格段に上がった。空いた時間は、衛生管理の強化や原料の鮮度保持などの品質向上、焼酎作りの研究に費やす。
「働く人たちが酒造りに真剣に向き合うことが大切。最新の機械を導入しても、原料の出来、気候などの諸条件は毎年変わります。焼酎造りは非常に人間的なんです」と長岡さんは話す。
先日、大島酒造のお酒が大好きだという大学生が就職したいと来たそうだ。新しい風が、同社の歴史をまた1ページ前へと進めた。

