【会社名】株式会社 中本製麺
【住所】〒857-4602 長崎県南松浦郡新上五島町曽根郷1202-1
【主な事業内容】麺類および食品製造・卸・販売・海産加工
【取材先】中本 茂(代表取締役)

※取材:2022年


“個性”と向き合う時間

午前5時30分。中本社長の朝は早い。製造スタッフの誰よりも先に出社し、作業服に着替えて支度を整える。日課であるモーニングコーヒーを飲みながら、製麺所内の室温と湿度をチェック。麺づくりにもっとも適した早朝から一日はスタートする。

春夏秋冬による気候の変化、その日の天候状況によって、うどん生地に使う原料の最適な配分は変わる。製麺でもっとも気をつかうのは、微細な調整をかけながら配合を決めるこの瞬間だという。

「ちょっとさ分量の加減を間違えると、麺が硬すぎたり、だらっと伸びたりすっよ。麺は素直かもん」。

五島うどんに欠かすことのできない、小麦に水、塩。中本製麺では、五島の素材を使用するほか、島外産も積極的に採り入れる。麵を口にした際に感じる、つるつる・しこしこ・もちもち、としたうどんの”個性“は、さまざまな産地の原料を掛け合わせることにより生まれるもの。

「やっぱり、一番さ美味いブレンドにこだわっとる。作る麺の種類ごとに混ぜるんを変えて生地を練っとるよ。いま、うちの品数は細かいのも含めると15種類ぐらいか。お客さんに作ってくれと頼まれたら、断れんもんなぁ。こんな増えてもた。倉庫は袋の山ですよ(笑)」。

生地が練り上がると次は、直径4cm、長さ20mほどの円筒状に引き延ばす。専用のロール機を使い、丁寧かつスピーディに。その際、延ばした生地同士がくっつかないよう丹念に塗るのは、椿油。油分を纏った生地はとぐろを巻くように桶に収まり、しばし寝かせる。

ここまでの作業を終えるころにはスタッフたちが出社をはじめ、製麺所内も賑やかに。

40年間、試行錯誤の連続

押出式の製麺機は使用せずに人の手を使うのが、五島手延べうどん。先ほどの生地を8の字を描くように二本の棒の間を渡し、引き延ばしと熟成を交互に繰り返す。すると、どんどんと生地は細さを増し、五島うどんを形づくる。

日本三大うどんにも数えられる、五島うどん。麺は一般的なうどんよりも細いため喉越しが良く、ツルっと一息に食べられる。麺のコシが強いのも特徴。

「麺は塩水を入れると生き物とおんなじ、ちゃんと面倒みてやらんといかん。ほんと手間ひま掛かっとさぁ」。

出来上がった製品は、いまでも毎日必ず湯がいて食べてみるという。

「麺の種類が多かけん、口にしてみんと美味かどうかわからんとね。長いことやっとるけど、いまだに思い通りにいかんこともある。『しもた~』と思うこともある。いつも同じようにはできんよ、だから麺づくりは面白かよな」。

麺に向き合い40年。今日もうどん作りを楽しむ、中本社長の姿があった。