【会社名】合同会社メイリ・カンパニー
【住所】〒811-5301 長崎県壱岐市芦辺町芦辺浦258-2
【主な事業内容】魚介類加工・販売
【取材先】赤木久美子(オーナー)
※初回取材:2022年
追加取材:2024年
壱岐に育てられた少女
「クミ、あなたがこの島に戻ってこれたのは、きっと神様が呼んでくれたからよ」。
古来より「神々が宿る島」と語り継がれる壱岐。神社や祠が数多く点在するこの島では、暮らしのそばに神様の存在があり、そして人々は何よりも神々への信仰を大切にした。
メイリ・カンパニーの代表を務める赤木さん。壱岐で出生したのち、幼少期は横浜に暮らした。とはいえ、故郷ははるか遠い存在などではなく、子どものころは夏休みのたびに帰省し、ひと夏を過ごした。肌がまっくろに焼けるほど海や野山を駆け回るわんぱく少女。その姿は、漁師や海女を営むおじちゃん・おばちゃんたちに優しく見守られた。
「うにやさざえ、トコブシ、海の幸をたくさん食べさせてもらいました。どこか懐かしい片田舎の温かさに包まれて、自分は育てられていたんだなって。私の原体験です」。
時は流れて、就職・結婚・出産。関東で暮らす赤木さんは、ひょんなきっかけから壱岐で暮らすことになる。「この島に縁を持つと、島を離れてもいつか必ず、神様が呼び戻してくれる」。壱岐に戻った際に、実の姉からそう聞かされた。
その後、10年ほどは島の漁協に勤め、そこで現在の会社の柱を成す、魚介類の加工事業と出会うことになった。
「魚も貝も海藻も年々減り続ける漁獲量。このままじゃ、海を生業にするみんなの生計が成り立たなくなるなって。少しでも恩返しをしたくて、加工品を作ろうと思いました」。
そうして2017年に生まれた、メイリ・カンパニー。赤木さんの飲み友だちだった、もっちゃん(松本さん)を会社に誘い、いまでは4名で事業を営む。商品開発は素人同然。しかし、やりたいことはたくさんあり、日々ああでもないこうでもないと、みんなで意見を出し合いながら、商品づくりを楽しんでいる。
紡ぐ、海の幸
イチ押し商品は、「壱岐の海ごはんシリーズ」。うにめしの素は炊き立ての白飯にサッとまぶすだけで、炊き込みご飯のようなうにご飯が味わえるお手軽な逸品。うに/さざえ/岩かきのオイルソースは、パスタにサッと和えるも良し、バゲットやお肉にちょい足しするも良し、食のアクセントに重宝する品だ。海ごはんシリーズは、香料や保存料を使用せず、すべて無添加。海の幸へのリスペクト、商品への愛は、存分に詰め込んだ。
「壱岐の海女さんは、レオタードを着て海に潜ります。寒さに耐えながら漁ってくれた海の幸を最大限、美味しく届けられるように。私たちも頑張らないとねって」。
いつかこの小さな田舎町に、大人から子どもまでみんなが集える場所を作りたいの。赤木さんは優しくほほえむ。それはかつて、自身を育ててくれたコミュニティのような場所。人と人がつながり、またそれが次の何かにつながっていく。神様はきっと、そんな島の人たちを、優しく見守ってくれているだろう。
~2年が経ち、赤木久美子さんにあらためてお話を伺いました~
協会との出会いはコロナ禍のころ。壱岐から出られず困っていたときに、千野理事長や事務局長が遠路はるばるいらしてくださったのがきっかけです。そのときに「オピニオンリーダー講習会」というのを開いてくださって、成功した方のお話など勉強や刺激になる貴重なお話を聴くことができてすごく助かった記憶があります。それからずっと、何かあった時には親身に相談にも乗ってくれて、いい意味で深入りしてくれるのが本当にありがたいです。
私、この仕事を始める前に働いていた漁協の組合長さんに「現状維持は敗北だ」と教わってきたんですね。だから新たな商品開発をどんどん進めています。その方は私がこの仕事を始める前にお亡くなりになったんですけど、彼の意志を私が継いでいるというか、やらなくてはいけないような気がして、あの世で回されてる感じ(笑)。「まだ働け」「久美子、次はこれを作れ」って(笑)。
ペットフード、お菓子、牡蠣飯、ほかにもたくさんの新商品が生まれていますし、計画も進行中です。そのためにキッチンも増やしましたし、2年後には息子も手伝ってくれる予定です。
2024年の協会の総会の際には、できたばかりの「のべだご最中」をお土産に採用していただきました。こんなふうに、何年経ってもフレンドリーにお付き合いさせていただいていて、さらに新しい出会いをつないでくれる。これからもずーっと頼り切ります(笑)。