【会社名】株式会社 いきいきファーム
【住所】〒853-0031 長崎県五島市吉久木町420-1
【主な事業内容】農産物の生産・販売
【取材先】八代 侑紀(代表取締役)・綾子(取締役専務)
※取材:2022年
五島のものには五島が合う
フルーツの王様、メロン。ここ五島には「椿メロン」という名の、王様がいる。
いきいきファームを運営する八代夫妻は、関西から五島に移住し、2016年から農家として事業をスタート。ブロッコリー、深ネギ、いんげん、カボチャ、そら豆、にんにくなど、年間で20種類ほどの野菜を栽培。加えて、メロンの育成も手掛ける。より美味しい作物を育てる試行錯誤の中で、辿り着いたのが五島のエッセンスを活用するアイデアだった。
島の代表花、椿。八代夫妻は実から油分を抽出したあとの搾り殻に目をつけた。この搾り殻を肥料に混ぜ、汲み上げた五島の海水と一緒にメロンに散布。すると、糖度が2度ほど上昇したという。
「果肉を口にすると明らかに甘さが増したと感じました。『五島で育てる作物には、五島のものが合う』。そう信じて挑戦を続けてきたのでうれしかったですね」。
この成功から誕生した椿メロンは、いきいきファームのオリジナルブランドとなった。その唯一の生産農家として、現在は赤肉と青肉の2種を栽培する。食べごろの間際まで畑で育てる椿メロンは、収穫時には完熟の一歩手前。丸い実の頂点から包丁を入れると溢れ出る果汁。甘美で芳醇な香りが広がり、果肉を口にすると柔らかさを感じながらも、しっかりとした歯ごたえを楽しめる。つまりは、島の果実の王様にふさわしい存在感。



大切にする師匠の教え
温暖なイメージのある五島も、冬は雪が降り積もるほど冷え込む。一年を通じた寒暖差、そして場所により地質が異なることから、五島で穫れない作物はないとも言われる。八代夫妻は、島の地の利と椿メロンでの成功体験を活かして、次は「椿やさい」の栽培に挑む。

侑紀さんと綾子さんは、季節に応じた旬の作物を、丁寧に、手塩にかけて育てることを信条とする。作物を育てる心構えはすべて、島の「師匠」から教わった。
「野菜たちに向き合う姿勢ひとつで採れる量も美味しさも変わるんだって。師匠は365日を畑で過ごすような人なので、ついていくのは大変ですけど(笑)」。
収穫した農作物は、福岡・大阪・東京と都市部にも出荷する。星付きレストランにも採用されるほど、いきいきファームの野菜と果物は重宝される存在だ。鮮度の良さと味の濃さには自信を持って送り出している。
「畑から預かったものをきちんと届けるまでが、私たちの役目。待ってくれる人のために必ず美味しい野菜を作りたいんです」。
雄大な空の下、八代夫妻はいきいきと笑った。

