【会社名】ごと 株式会社
【住所】〒853-0031 長崎県五島市吉久木町726-1
【主な事業内容】レトルト食品製造・販売、農産物加工・製造・販売、実店舗運営
【取材先】木下 秀鷹(代表取締役社長)
※取材:2022年
目指すは100点満点の美味しさ
コロコロっと可愛らしい姿形の石焼き芋。芋の表面は皮から蜜が溢れ、キラキラと輝く。半分に割るとホクホクの湯気から覗く、黄金色。ねっとりとした濃厚な食感が充分に熟したさつまいもの証だ。驚きなのは、これが一度冷凍された焼き芋だということ。


「五島ごと芋」は、ごと(株)が開発したさつまいもを指す。五島列島でも自社の畑と契約農家でしか栽培されない希少品種だ。糖度は平均36.4度。高い数値の甘さを安定して保っている。
「畑の土づくりから栽培・収穫、焼き芋の製造、そして袋詰めして出荷まで、すべての工程を島内で行い、徹底した品質管理のもとに商品を作ります。100点満点の美味しさを目指す。それが大事だと考えていますから」。
そう語るのは、ごとの木下社長。島外から五島に移住した身であり、最初は社員としてごとに入社した。転職の決め手になったひとつが、ごと芋の美味しさだった。ひとりの人生を変えるほどの味、というと少し大袈裟だろうか。
食を探究する、日本一の企業
商品へのこだわりは、ごと芋の栽培と製造時の品質チェックに表れている。
栽培時は、「EMぼかし肥料」と呼ぶ自社開発の肥料を使うことで、栄養たっぷりの土壌で生育。もちろん、気温や湿度、天候に応じて、肥料と水の量はコントロール。畑ごとの芋にでき具合のバラつきが出ないよう、契約農家との定例会議も欠かさない。
収穫したさつまいもは、品質・大きさ・形で選別し、厳しくチェック。選りすぐったものだけを焼き芋に使う。焼く前には暗室でじっくり寝かせること約40日。熟成後のさつま芋を評価員が見定め、OKを得たものだけが実際に焼かれる。
焼きの現場では、温度と水分量を調整しながら丁寧に調理。出来上がり後はマイナス50℃で一気に凍結。CAS冷凍を用いることで、解凍した際に旨み成分である「ドリップ」が流れ出ない。
「『下手なものは、出荷しない』。先代の社長から大切にする、いわば当社のDNAです。それだけ美味しさにはこだわっていますし、だからこそ、五島ごと芋がNo.1だと自信を持っています」。
事実、ごとは日本さつまいもサミット2022にて、「さつまいも・オブ・ザ・イヤー」と「ファーマーズ・オブ・ザ・イヤー」のダブル受賞に輝いた。つまりは、日本一のさつまいもと、その生産者に選ばれたのだ。
こうした美味しさの探究は、焼き芋に留まらない。ごとが手掛ける「五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー」をはじめとしたレトルト製品にも表れる。厳しい品質管理を経た商品は、まるで作り立てを思わせる味わい。いまでは有名ホテルなどとコラボして、OEM製品も開発している。


木下社長が描くのは、五島から日本を元気にする未来。美味しい名産品を携えて、地方創生の先駆者を目指す。