【会社名】近藤製菓 フレージュ近藤
【住所】〒851-3422 長崎県西海市西彼町小迎郷1027-1
【主な事業内容】和洋菓子製造、和洋菓子販売
【取材先】近藤 晴彦(代表取締役)・晴哉(菓子職人)

オリジナルの「みかんのどら焼き」

子どものころのお絵かきで描いた三角屋根の夢のお菓子屋さん。フレージュ近藤はそんな佇まいのお店だ。ドアを開けるとたくさんの焼き菓子やお饅頭などが花飾りやオーナメントの愛らしい飾りつけとともに迎えてくれる。奥のショーケースに並ぶ季節のフルーツがふんだんにあしらわれたケーキや和洋生菓子は色とりどりにキラキラと輝き、まるで宝箱を覗いているよう。

「西海市はフルーツ栽培が盛んでイチゴの名産地なのですが、さくらんぼ、ブルーベリー、ぶどう、デコポン、みかんなどの柑橘も盛んです。叔父も果樹園を経営していて、ケースに並んでいる『みかんのどら焼き』には、叔父の果樹園で採れたものの、規格外で市場に出せないデコポンを引き取って皮ごとペーストにしています。」

こう話すのは4代目の晴哉(せいや)さん。近藤製菓店はこの地で100年近く続く老舗菓子店で、フレージュ近藤はその2号店として平成12(2000)年、佐世保市と西海市を結ぶ西海橋、新西海橋につながる国道206号線沿いにオープンした。

話に出たみかんのどら焼きを試食させていただく。どれどれ、とまずは半分に割ると、ふんわり生地と、たっぷりのデコポンペースト入り白あん、真っ白な生クリームがきれいな層を作っている。口にすればふわっと広がる柑橘風味のさわやかな甘さ。生クリームの軽やかさのおかげで、あんこの持つ重みは気にならない。

「あんこと生クリームは同量くらい入っているので、クリーム好きな人にも美味しく食べていただけると思います。甘さを控えめにして、いくつでも召し上がっていただけるよう作っています。」

どら焼きはほかに、つぶあん+生クリーム、つぶあん+抹茶クリームがある。あんこ用の小豆は北海道産から取り寄せているが、抹茶は銘茶の生産地として有名な彼杵(そのぎ)のものを使うなど、原材料にはできるだけ地元の食材を使うよう心がけている。

変わらずに在りつづけることの大切さ

添加物が一切入っていないフレージュ近藤の和洋菓子。日持ちは長くないが、美味しさと安心にこだわって、晴哉さんとお父様の晴彦さんで毎日手作りしている。3代目の晴彦さんは代表取締役兼ケーキ職人だ。

「田舎のお菓子です。いまどきこんなにフルーツが載ったケーキなんてほとんど見ない。時代遅れです。でも、西海市には2、3軒しかお菓子屋さんないから、紅白の撒き餅からお正月の飾り餅、ケーキ、お饅頭、おみやげ用のお菓子、何でも揃わないとね。ずっと地元にお世話になってきたから。」

確かに最近ではこんなにたっぷりとフルーツの載ったケーキも珍しい。それが懐かしくもあり、新しくもある。

価値観もライフスタイルも変化のスピードが速いこの時代に、変わらずに在りつづけることの大切さを考えるその晴彦さんの横顔には、地域に根差す覚悟と責任を感じた。

最後に、晴哉さんにこれからの抱負を尋ねた。

「ここでずっとお店を続けながら、ゆくゆくはネット通販にも挑戦してたくさんの人にうちのお菓子を食べていただきたいです。長崎に遊びに来た方に、自然豊かで、山の幸にも海の幸にも恵まれた西海市にも足を止めていただいて、そんなときに気軽に立ち寄っていただけるお店になれたら。」

地域に根付き、地域に愛されつづけてきた老舗菓子店が作る和洋菓子は、これからもその土地の人びとの折々に花を添え、その花はやがて日本中へと広がっていくのだろう。

大らかな晴彦さん(左)とおだやかな晴哉さん(右)。店は家族で切り盛りしている。